百人一首『52番』明けぬれば 暮るるものとは 知りながら なほ恨めしき 朝ぼらけかな(藤原道信朝臣)

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百人一首の第52番は、平安時代の公卿・藤原道信朝臣(ふじわらのみちのぶあそん)が詠んだ、夜明けの切なさを巧みに表現した歌として知られています。

この記事では、百人一首『52番』の原文、読み方、決まり字、現代語訳と意味について説明します。
さらに、作者、出典や語呂合わせについても詳しく解説していきます。

百人一首『52番』の和歌とは

原文

明けぬれば 暮るるものとは 知りながら なほ恨めしき 朝ぼらけかな

読み方・決まり字

あけぬれば くるるものとは しりながら なほうらめしき あさぼらけかな

「あけ」(二字決まり)

現代語訳・意味

夜が明けてしまえば、やがてまた日が暮れて夜が来ると分かってはいるけれど、やはり恋人と別れるこの夜明けは恨めしく思う

語句解説

明けぬれば「夜が明けてしまえば」という意味。助動詞「ぬ」の已然形に接続助詞「ば」がついて確定条件を表します。
暮るるものとは「日は必ず暮れて、また会える」という意味。「と」は引用の格助詞、「は」は強調を示す係助詞。
知りながら「分かってはいるけれど」という意味。「ながら」は逆接の接続助詞で、対照や逆の関係を示す。
なほ「それでもやはり」という意味の副詞。未練や変わらない気持ちを強調する。
朝ぼらけ「明け方、辺りがほのぼのと明るくなってきた頃」という意味。秋や冬に使われ、恋人との別れの時を暗示する。

作者|藤原道信朝臣

作者名藤原道信朝臣(ふじわらのみちのぶあそん)
本名藤原道信
生没年972年(天禄3年) – 994年(正暦5年)
家柄平安時代中期の公家。太政大臣・藤原為光の三男。
役職従四位上、左近衛中将
業績和歌に優れた人物で、大鏡では「いみじき和歌の上手」と称されていた。中古三十六歌仙の一人。
歌の特徴恋歌において情感を込めた作品が多く、素直で率直な感情を詠むことが特徴。若くして亡くなったため、その作品は繊細で初々しさがある。

出典|後拾遺和歌集

出典後拾遺和歌集(ごしゅういわかしゅう)
成立時期1086年(応徳3年)
編纂者藤原通俊(ふじわらのみちとし)が中心
位置づけ八代集の4番目の勅撰和歌集
収録歌数1,218首
歌の特徴伝統的な和歌を受け継ぎつつ新風を示し、女性歌人の作品が多く、宮廷生活を具体的に反映した詞書が特徴です。
収録巻「恋二」672番

語呂合わせ

あけぬれば くるるものとは しりながら なほうらめしき あさぼらけかな

あけ うらめし(開けたら、うらめし)

百人一首『52番』の和歌の豆知識

百人一首『52番』の背景は?

百人一首『52番』は、平安時代の公卿である藤原道信朝臣が詠んだ歌です。この和歌は、夜明けとともに過ぎていく時間に対する切なさを表現しています。

当時の貴族社会では、夜明けの時間は宴や集いの終わりを告げる象徴でした。和歌に込められた背景には、楽しい時間が終わってしまう寂しさや、日が昇ることで再び現実に戻る心の動きが隠されています。道信はそのような瞬間の心情を巧みに表現し、時の移ろいの無情さを深く感じさせる作品を作り出しました。人間の感情と自然の景色を重ねる手法が用いられています。

百人一首『52番』の表現技法は?

百人一首『52番』には、複数の表現技法が使われています。特に、擬人法と倒置法が特徴的です。

「明けぬれば」という表現は、夜明けを人間の行動のように表し、擬人法によって時間の流れに対する感情を際立たせています。また、和歌全体の構成には倒置法が使われ、感情を強調して印象を深めています。これにより、夜から朝への移り変わりの瞬間を情緒的に描写し、読者に心情の余韻を残します。加えて、夜と朝を対比的に詠むことで、人生のはかなさや、過ぎゆく美しい時間の無情さを効果的に伝えています。

和歌に込められた自然の美しさ

百人一首『52番』では、自然の美しさを通して心情を描写する手法が取られている。

夜から朝へと変わる時間の流れを視覚的に感じさせ、情緒豊かに表現している。特に、夜明けの光景は新しい始まりと過去の終わりを同時に象徴し、和歌全体に奥深さを加えている。自然と人間の感情を巧みに重ねる技法は、平安時代の和歌の魅力の一つである。

まとめ|百人一首『52番』のポイント

この記事のおさらい
  • 百人一首『52番』の作者は藤原道信朝臣である
  • 和歌の原文は「明けぬれば 暮るるものとは 知りながら なほ恨めしき 朝ぼらけかな」
  • 読み方は「あけぬれば くるるものとは しりながら なほうらめしき あさぼらけかな」
  • 「あけ」が二字決まり
  • 現代語訳は「夜が明けると分かっていても、別れの夜明けは恨めしい」という意味
  • 「明けぬれば」は「夜が明けてしまえば」という意味
  • 「暮るるものとは」は「やがて夜が来ると分かっているのに」を表す
  • 「知りながら」は「分かっているけれど」という意味
  • 「なほ」は「それでもやはり」という未練の強調
  • 「朝ぼらけ」は明け方を意味し、別れの象徴として使われる
  • 作者・藤原道信朝臣は平安時代中期の公家
  • 出典は『後拾遺和歌集』
  • 『後拾遺和歌集』は1086年に成立した勅撰和歌集
  • 道信朝臣は「いみじき和歌の上手」と称されていた
  • この和歌は情感を込めた恋歌が多い道信の作品の特徴を示している
  • 和歌には擬人法や倒置法が用いられている
  • 「明けぬれば」は時間の移り変わりを象徴している
  • 自然の美しさと感情を重ねる技法が用いられている
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