百人一首の第6番は、奈良時代の歌人、大伴家持(おおとものやかもち)が詠んだ、冬の情景を繊細に表現した歌として知られています。
百人一首『6番』の和歌とは
原文
かささぎの わたせる橋に おく霜の 白きを見れば 夜ぞふけにける
読み方・決まり字
かささぎの わたせるはしに おくしもの しろきをみれば よぞふけにける
「かさ」(二字決まり)
現代語訳・意味
かささぎ(鳥の一種)が翼を連ねて渡したという橋、つまり宮中の階段に降りた霜の白さを見ていると、夜がすっかり更けてしまったのだなあ、と感じた。
背景
百人一首の『6番』は、奈良時代の宮廷文化や中国の七夕伝説を背景に詠まれた和歌です。かささぎは、中国の伝説で織姫と彦星をつなぐ橋を作る鳥とされ、その物語が日本にも伝わりました。
この歌では宮中の階段を天上の橋に見立て、その上に降りた霜の白さから冬の夜の静けさや時間の経過を感じ取っています。また、当時の宮中は格式高く、美しい建築や自然が調和した場所でした。和歌はそのような風景や文化を背景に生まれ、人々の感性を豊かに表現しています。この背景を知ることで、歌の情景や込められた意味がより深く理解できるでしょう。
語句解説
かささぎ | カラス科の鳥で、七夕伝説に登場する鳥。織姫と彦星を会わせるために天の川に橋を架けるとされています。この和歌では、宮中の階段をその橋に見立てています。 |
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渡せる橋 | かささぎが翼を広げて架けた橋を指します。七夕伝説では天の川に架かる橋ですが、この歌では宮中の階段に例えられています。 |
おく霜 | 宮中の階段に降り積もった霜のことを指します。霜の白さが夜の冷たさや寒さを表現しています。 |
白きを見れば | 降り積もった霜の白さを見た、という意味です。この部分が、歌全体に視覚的な美しさと寒さを感じさせます。 |
夜ぞふけにける | 「ぞ」は強調の助詞、「ふけにける」は「夜が更けてしまった」という意味です。この表現により、寒さの中で夜が静かに深まる様子が伝わります。 |
作者|中納言家持
作者名 | 中納言家持(ちゅうなごんやかもち) |
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本名 | 大伴家持(おおとものやかもち) |
生没年 | 718年(養老2年)~ 785年(延暦4年) |
家柄 | 大伴氏は、古代日本の有力な貴族・武人の家系で、武功を重んじる一族として知られていました。父親は著名な歌人、大伴旅人です。 |
役職 | 中納言(宮中の高官)。また、越中守など地方官も務めています。 |
業績 | 『万葉集』の編纂に深く関与し、万葉集に473首の歌が収められています。大伴家持は、万葉集に最も多くの歌を残した人物でもあります。 |
歌の特徴 | 自然の美しさを繊細に描写する技量に優れている。宮中や自身の生活を題材にした歌も多く、リアルな感情や風景が織り交ぜられています。 |
出典|新古今和歌集
出典 | 新古今和歌集(しんこきんわかしゅう) |
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成立時期 | 1205年(元久2年) |
編纂者 | 藤原定家(ふじわらのていか)、藤原家隆(ふじわらのいえたか)、源通具(みなもとのみちとも)などの歌人 |
位置づけ | 八代集の8番目の勅撰和歌集 |
収録歌数 | 約1,980首 |
歌の特徴 | 情調的で象徴的な表現が特徴で、余情や幽玄を重んじた繊細な歌風を持つ。初句切れや三句切れ、体言止めなどの技巧を多用し、貴族の失望感や虚無感を反映。 |
収録巻 | 「冬」620番 |
語呂合わせ
かささぎの わたせるはしに おくしもの しろきをみれば よぞふけにける
「かさしろ(カササギ白い)」
百人一首『6番』の和歌の豆知識
七夕伝説との関係
七夕では、織姫と彦星が年に一度天の川で会う際、かささぎが翼を広げて橋を架けると言われています。この伝説が日本に伝わり、宮中の階段に見立てられたのが6番の和歌です。
「霜の白さ」と「冬の寒さ」
この白さが夜の冷たさを強調し、自然の厳しさを感じさせます。冬の情景は静寂と共に時間の経過を強く感じさせ、夜がすっかり更けてしまったことを悟らせます。
家持の特徴的な詠み方
この6番の和歌でも、冬の霜と夜の静けさを通じて、時間の流れや感情を詠み込んでいます。このような表現は、彼の他の和歌にも多く見られる特徴です。
まとめ|百人一首『6番』のポイント
この記事のおさらい
- 百人一首『6番』の歌は大伴家持によるものである
- 原文は「かささぎの わたせる橋に おく霜の 白きを見れば 夜ぞふけにける」
- 読み方は「かささぎの わたせるはしに おくしもの しろきをみれば よぞふけにける」
- 決まり字は「かさ」(二字決まり)である
- かささぎは七夕伝説に登場する鳥である
- 七夕伝説では、かささぎが天の川に橋を架けるとされている
- 宮中の階段に降りた霜を、天の川に架かる橋に見立てている
- 「おく霜」は、冬の寒さや夜の静けさを象徴している
- 「白きを見れば」とは、霜の白さを見て感じた情景である
- 「夜ぞふけにける」は、夜が更けたことを強調する表現である
- 大伴家持は万葉集に473首の歌を収録している
- 大伴家持は自然の美しさを繊細に描写する歌人である
- 出典は『新古今和歌集』の冬の巻に収録されている
- 『新古今和歌集』は鎌倉時代初期に編纂された和歌集である
- 『新古今和歌集』は「幽玄」や「余情」の美を重んじた表現が特徴である